民事執行法による給与差押金額と税金滞納による給与差押金額は異なることを知っていますか。
実際の給与の例で計算してみました。
民事執行法による給与差押金額
民事執行法には「差押禁止額」が規定されています。
- 手取り給料の4分の3
- 33万円
どちらか少ない方が「差押禁止額」となります。手取り給料の4分の1、もしくは33万円より多い部分が差し押さえとなります。
手取りの4分の1が差し押さえされる!
税金滞納による給与差押金額
税金滞納により給与差押を受けた場合、国税徴収法第76条第1項各号に差押禁止額が記載されています。
第1号規定 | 源泉徴収される所得税の金額 |
---|---|
第2号規定 | 給与から天引きされる住民税の金額 |
第3号規定 | 給与から天引きされる社会保険料の金額 |
第4号規定 | 生活費として残す金額 滞納者10万円+同一生計人数×45,000円 |
第5号規定 | 給料の総支給額から第1号から第4号までの金額の合計を引いた金額の20%の金額 |
例を見てみましょう。
給与明細(例)から計算してみよう
総支給金額 | 282,078円(A) |
---|---|
所得税額 | 4,280円(①) |
住民税額 | 4,700円(②) |
社会保険料額 | 47,680円(③) |
差押金額は1,000円単位にする規定がありますので、端数処理をそれぞれ行います。
(A)は1,000円未満切り捨て、第1号規定から第5号規定までは1,000円未満切り上げとなります。
同一生計人は、妻1人と子1人です。第4号規定の金額は
100,000円+45,000円×2=190,000円(④)となります。
第5号規定の金額は
{(A)-(①+②+③+④)}×20%
となるため当てはめると
{282,000円ー(5,000円+5,000円+48,000円+190,000円)}×20%
=6,800円(⑤)(切り上げて7,000円となります)
端数処理して、表にまとめると
総支給金額(A) | 282,000円 |
---|---|
所得税額(①) | 5,000円 |
住民税額(②) | 5,000円 |
社会保険料額(③) | 48,000円 |
生活費(④) | 190,000円 |
体面維持費(⑤) | 7,000円 |
となります。差押禁止額は①+②+③+④+⑤ですので、計算すると
255,000円になります。
282,000円ー255,000円=27,000円
よって、27,000円が差押可能金額となります。
【差押可能金額算出の公式】
(A)-{(A)-(①+②+③+④)}×20%
民事執行法と国税徴収法による給与差押の違い
実際に国税徴収法による給与差押金額を計算してみると、あることに気づくかと思います。
「差押可能金額って算出されない場合もあるのでは??」
その通りです。国税徴収法に規定される給与差押禁止額には固定額で生活費(国税徴収法第76条第1項第4号)が滞納者分として1か月あたり10万円保証しているからです。
つまり、手取りが10万円以下なら差押不可能ということです。
一方民事執行法による給与差押は違います。たとえ手取り給料が10万円以下であっても、手取りの4分の1が差し押さえされます。
ちょうど10万円の手取りであれば、25,000円の差し押さえとなります。
国税徴収法による給与差押では差押できないことがある!
まとめ
給与差押といっても、民事執行法によるものなのか、国税徴収法によるものなのかで計算方法が全く違ってきます。
差し押さえするまでの手続きも、民事執行法による差し押さえは裁判所を介する必要がありますが、国税徴収法による差し押さえは裁判所を介す必要がありません。
色んな違いがありますが、今回は計算方法についてお教えしました。ご参考まで。